「フレームに囚われた意識では悟れない──“部分”の世界と全体性への目覚め」
我々が日常的に見ている世界は、まるで無数の“フレーム”の集合体のようだ。ニュースの一部分、誰かの言葉の断片、自分自身の思考の切り取り…。
しかし、私たちはしばしばその「切り取られた断片」こそが「真実」だと錯覚する。だが果たして、その断片（フレーム）だけで全体が見えるだろうか？
● フレームとは何か？
フレームとは、意識のレンズが焦点を当てている「ある一部分」のことだ。
それはカメラのフレームであり、SNSの投稿であり、思考や感情の一場面でもある。
しかし、仏教の「縁起」や「空」の思想に照らすならば、どの部分も単独では成立せず、あらゆるものが関係性によって成り立っている。ゆえに、部分だけを切り取って理解したつもりになると、その関係性を見失い、誤解や執着を生む。
● 部分への執着が起こす錯覚
スピリチュアル的な視点でいえば、私たちは魂の成長の過程で「部分への執着」という幻想に何度も囚われる。
「この人だけが特別だ」「この考え方が絶対だ」「この苦しみは永遠に続く」といった思い込みは、すべてフレーム化された意識の所産である。こうした意識は、ユングのいう「投影」にも通じる。自我が見たいものだけを見て、無意識の全体性（セルフ）を遮断してしまう。
● 「悟り」とは、フレームの解体である
仏教における「悟り」とは、このフレーム的意識からの脱却である。
マハームドラーやゾクチェンでは、心の自然な状態（リグパ）を体験するには、部分的知覚（分別心）を超えて、全体性としての今この瞬間をただ在るがままに観る必要があると説かれる。悟りとは、全体をあるがままに観る力。フレームを外し、「すべてはつながっている」ことを体感する意識の変容である。
結論：
私たちはつい、目に見えるもの、耳に入ってくるもの、思考の表層だけを「真実」だと思い込んでしまう。
だがそれは、意識がフレームに囚われている状態に過ぎない。真に悟りへと至るためには、一つの部分に固執せず、それが無数の要素と相互依存していることを理解する必要がある。
部分の中に全体を見る智慧（たとえば曼荼羅のように）を育むことで、我々はフレームを超えた認識に目覚め、真の自由に至ることができるのだ。