差別と三毒 ― 執着・嫉妬・劣等感と心のバランス
私たちの心には、「比較」「差別」「執着」「嫉妬」「劣等感」などの感情が常に影響を与えています。これらは、私たちの個人的な苦しみの根源であり、同時に社会における対立や構造の原因ともなり得ます。仏教で説かれる三毒――貪（むさぼり）、瞋（いかり）、痴（無明）――もまた、この心の動きに密接に関係しています。
差別と三毒のつながり
差別の根底には、強い「自我（エゴ）」が存在しています。エゴは他者との比較を促し、優劣をつける傾向を持っています。仏教的に見れば、この差別が生じる背景には三毒が深く関わっています。
- 貪（むさぼり） は「もっと欲しい」「自分だけが得たい」という執着。
- 瞋（いかり） は「相手を拒絶したい」「排除したい」という怒り。
- 痴（無明） は「真実を見失い、偏った観念に囚われる無知」。
例えば、他人の成功に嫉妬し、その人を排除したくなる時、その感情は「自分は足りていない」という劣等感（貪）から始まり、相手に対して怒り（瞋）が湧き、最終的に自分の無知（痴）が引き起こされることになります。差別とは、この三毒が複雑に絡み合うことで強化されていきます。
傲慢と我慢 ― 観念の二面性
傲慢と我慢もまた、「観念の固定化」から生じるものです。どちらもエゴが作り出した偏った観念に囚われた状態です。
- 傲慢 は「自分は特別だ」「他人より上だ」という観念への執着。
- 我慢 は「本当は嫌だが、観念的に耐え続ける」こと。
例えば、スポーツにおいて自分が他人より優れていると考える傲慢な気持ちや、逆に自分を卑下して「私はダメだ」と感じて我慢し続ける気持ちは、いずれも偏った観念から生じます。これらは心の中でバランスを欠いた状態を作り出します。
左脳と右脳 ― 差別と瞑想のバランス
脳科学的に見ると、左脳は理性や分析、差別的な思考を担い、右脳は直感や全体性、瞑想的な意識を担います。左脳は私たちに「この人は自分より劣っている」「このグループは異質だ」といった理性的な判断を下させます。これが「差別」や「偏見」を生む原因となります。一方、右脳的な瞑想は、私たちの心の中の偏りや執着を解き放ち、全体性を感じさせてくれる力を持っています。
たとえば、ある人物を見て「自分と違う」と感じ、その違いを強調する差別的な態度を取る時、それは左脳の理性による「区別」に基づいています。しかし、右脳的な瞑想を通じて、「私はあなたと同じ存在であり、私たちは切り離せない」という感覚を持つことで、差別的な態度が和らぎます。左脳と右脳のバランスを保つことが、差別を超えていくための鍵となります。
娯楽としての差別 ― 観念的に楽しむ娯楽と心の整合性
現代の娯楽にはしばしば差別的要素が含まれています。映画やテレビ番組、ゲームなどでは、キャラクター同士の格差や対立を描き、視聴者はその対立を楽しむことがあります。娯楽として差別的要素を扱うことには、必ずしも道徳的な問題があるわけではありません。娯楽の中で差別を「観念的に楽しむ」ことができるのは、現実の社会における対立や差別とは区別されているからです。
ここで重要なのは、娯楽の中での差別はあくまで観念的なものであり、それが現実世界での行動に影響を与えないようにすることです。たとえば、映画『ダークナイト』のように、悪役と善人の対立を描くことが娯楽の一部となることはよくあります。しかし、そのような娯楽はあくまで「虚構の世界」の中で行われるものであり、現実社会での差別的行動や偏見とは切り離して考えるべきです。
差別を娯楽として楽しむことは、現実の差別を助長するものではなく、視覚的なエンターテインメントとして消費されるべきです。ただし、その娯楽が感情的に強く影響を与えることもあるため、自分の行動と娯楽との違いを意識し、現実世界では差別的な行動を避けることが大切です。
中道・中庸・中観の智慧
仏教の「中道」は、極端な快楽や苦行に偏らず、ちょうどよい道を歩むことを教えます。
儒教の「中庸」は、感情や行動において偏らず、調和を取ること。
そして、中観は「物事を二元的に分けるのではなく、全体として見る」視点を持っています。例えば、「私は他の人より優れている」と傲慢に考えたり、「私はダメだ」と卑下して我慢することは、いずれも極端な偏りです。中道の智慧を使えば、「優れている／劣っている」という二元的な対立を超えて、すべての存在に意味があり、全てが同じ道を歩んでいると感じることができるのです。
娯楽の中で差別的要素を楽しむことは、「偏らない心」を持つことと調和します。観念として差別を描くことと、現実で差別を行うことを切り分けることで、私たちは娯楽としての楽しみと心の平穏を保つことができるのです。
まとめ ― 差別を超えるために
- 差別や嫉妬、劣等感は三毒の複合的な現れである。
- 傲慢も我慢も「観念への執着」であり、エゴを肥大させたり抑圧したりしている。
- 左脳の理性による差別と右脳の瞑想による全体性をバランスさせることが大切。
- 中道・中庸・中観の実践により、偏りを超えた自由な心に近づける。
- 娯楽における差別的要素は、観念的に楽しむことができるが、現実世界での行動には影響を与えないように意識すること。
差別を「なくす」ことが目標ではなく、差別を見抜き、それを超えていくことが重要です。娯楽の中で差別を楽しんだとしても、それが現実の行動に影響を与えないよう、バランスを取ることが私たちの成長に繋がります。
個人的後記
差別は基本的に仏教ではしない。
ただ煩悩を逆に利用することはある。
左脳が差別を行っているので左脳が右脳をサポートしてやることができる。
それにより差別を解消させることが目標である。
娯楽により差別を合理化させているのではなくバランスを保つことにより差別をしても良いという風な誤解を招かないように注意していただきたい。
差別することなく全てはひとつである。これを悟ることが目標である。